会長挨拶

日本アカデミック・アドバイジング協会の設立について

会長 清水 栄子

 このたび、日本アカデミック・アドバイジング協会(Japan Association for Academic Advising:通称JAAA)を設立することになりました。

 2017年2月から「アカデミック・アドバイジング・サロン」という研究会を開催してきました。その過程で、アカデミック・アドバイジングに携わっている教職員が情報を共有し交流する広場(フォーラム)が必要と考えるに至りました。そこで、これまでの活動に賛同いただいた方と共に本協会を設立することになりました。

 私たちは、アカデミック・アドバイジングを「学生自身による将来の目的・目標の決定とその達成に向けて、担当者が途中段階のアセスメントを行いながら学生個人のニーズに沿った支援をすること」と捉えています。アカデミック・アドバイジングは、学生を成功に導くための支援と言われています。スチューデント・サクセスともいうこの概念は日本の大学ではまだ浸透していません。具体的には大学生活に対する満足感、学生の望む知識・スキル・能力の獲得、学習目標の達成などがあげられます。スチューデント・サクセスの形は決して画一的ではなく、学生によってさまざまです。とりわけ、COVID-19禍以降、学生の学習環境が一変してきている現状では、個々の学生に応じた支援がこれまで以上に求められていることを実感しています。

 アカデミック・アドバイジングは、個々の学生のニーズに添った支援として米国で発達してきました。近年、日本においてもアカデミック・アドバイジングという言葉が広がりはじめ、新たに専門の窓口や組織を設立したり、専門的に担当する人材を雇用したりする大学も現れています。もちろん、アカデミック・アドバイジングはすべて新しい支援というわけではありません。これまで教職員が行ってきた履修指導や学習相談、キャリアに関わる支援、学生生活をより充実したものにするための相談などもアカデミック・アドバイジングの一環なのです。従来行ってきたことをアカデミック・アドバイジングとして再定位し、情報共有を含めた連携がとれる体制や仕組みを構築・整備していくこと、それが本協会設立の背後に込められた思いです。

 本協会では、スチューデント・サクセスを促すためのアカデミック・アドバイジングの理論と実践の方法論を、日本の高等教育において確立し普及することを目的としています。アカデミック・アドバイジングの質を高めるために、研究の推進だけでなく、会員間の情報共有や理論と実践に即した研修による能力開発を行っていく予定です。質の高い実践を目指すためには、次の世代の教職員に対する能力開発も必要だと考えています。そうしたさまざまな活動が、やがて大学教育を根本のところで支えるプロフェッショナルな活動となっていくことを願っています。

 本協会の理念や活動に、ご賛同いただけるみなさまのご入会をお待ちしております。

PAGE TOP